ゴミのやま

完全自分向け雑記

Poisson-Boltzmann方程式を導出する

目的

  • 分子シミュレーションでよく使われるPossion-Boltzmann方程式を導出する。間違ってたら教えて下さい。

出発

まずPossion equationから出発する


∇(ε(r)∇φ(r)) = -4πρ(r)

ε(r):点rにおける誘電率; φ(r):点rにおける静電ポテンシャル; ρ(r):点rにおける電荷密度

この式はある点における電荷分布ρ(r)がわかれば, ある点におけるポテンシャルが計算できることを示す。

電荷分布をBoltzmann分布で表す

特定の場所におけるイオンの濃度がBoltzmann分布によって示されるとする。つまり,


c_i(r) = c_0exp(-\displaystyle \frac{z_ieφ(r)}{K_BT})

c_i(r):イオンiのrにおける濃度; c_0:バルクのイオン濃度; z_i:イオンiの価数; z_iイオンの価数; e電荷素量;φ_i(r): 場所rにおけるイオンiのポテンシャル; K_B:ボルツマン定数; T:温度;

以上のイオンの濃度分布にイオンの価数および電気素量をかけることで, イオンiの点rにおける電荷分布が得られる。


ρ_i(r) = z_iec_0exp(-\displaystyle \frac{z_ieφ(r)}{K_BT})

溶質から来る電荷分布ρ_{solute}(r)および全イオンからの寄与を考慮することで,

\displaystyle{
ρ(r) = ρ_{solute}(r) + \sum_{i=1}^n ρ_i(r) = ρ_{solute}(r) + \sum_{i=1}^n z_iec_0exp(-\displaystyle \frac{z_ieφ(r)}{K_BT})
}

これを前述のPossion equationに代入することでPossion-Boltzmann equationを得る。

\displaystyle{
∇(ε(r)∇φ(r)) = -4π(ρ_{solute}(r) + \sum_{i=1}^n z_iec_0exp(-\displaystyle \frac{z_ieφ(r)}{K_BT}))
}

Poission-Boltzmann equationを線形化する

 z_ieφ_i(r) << K_BTのとき, 一次の項までマクローリン展開すると

\displaystyle{
exp(-\displaystyle \frac{z_ieφ(r)}{K_BT}) = 1 - \frac{z_ieφ(r)}{K_BT}
}

これをでPossion-Boltzmann equationに代入して

\displaystyle{
∇(ε(r)∇φ(r)) = -4π(ρ_{solute}(r) + \sum_{i=1}^n z_iec_0 - c_0 \sum_{i=1}^n \frac{z_i^2e^2φ(r)}{K_BT})
}

系内のイオンの電荷の和が0であるなら\displaystyle{\sum_{i=1}^n z_iec_0 = 0}であるので, 以下のような線形化されたPoisson-Boltzman方程式を得る

\displaystyle{
∇(ε(r)∇φ(r)) = -4π(ρ_{solute}(r) - \frac{c_0e^2}{K_BT} \sum_{i=1}^n {z_i^2φ(r)})
}

デバイ長

線形化されたPoisson-Boltzman方程式において誘電率が場所によらず一定値εであるとすると, 前述の方程式の末項を変形することでデバイ長を得る。デバイ長以下では電場は遮蔽されない。

参考:

www.cchem.berkeley.edu

 

得たPoission-Boltzmann方程式を解く

modernな解法は調べていないが, 差分法による直感的アプローチは以下のサイトがとてもわかりやすかった。

teamcoil.sp.u-tokai.ac.jp

先に導出した式は線形化されているので以下のステップにより簡単に解くことができる(疑問:線形化されてなかったらどうするんでしょうね。。。?)

  1. グリッドを切る
  2. 境界条件を設定
  3. 端から順にポテンシャルを解いていく
  4. 各点のポテンシャルの値がself-consistentになるまで反復する

実際の分子シミュレーションでは・・・

ステップごとにポテンシャルを求めていくのは超ハイコストなので行われていないらしい。MM-PBSAなどでリガンド相互作用の計算に使われている。というわけで次はMM-PBSAについて書く(予定)